「ええっ!? そのまま出ちゃったの?」
戻ってきたノインが、素っ頓狂(すっとんきょう)な声を上げた。
「あたしと間違えたワケね……」
ちょっと外の空気を吸ってくると出ていた間に、随分とヤバイ状況に陥っている。
ベリルが間違えるなんてコトもあるのか、と驚きつつも半ば呆れて右手で顔を覆った。
バレるのは時間の問題かもしれない……ノインは冷や汗を垂らす。
当の本人は、他人事のようにブランデーのグラスを傾けている。
「あんたは相変わらず図太いわね」
溜息混じりに発したノインに、ベリルは小さく笑って軽くグラスを掲げた。