記す者

「いつもの仕事とは空気が違うだろ。それ噛んでリラックスしな」

「ありがと」

 ピリピリしてるのかと思えば、みんなどこか気楽で──不思議な雰囲気だ。

「どうした」

「え、ううん。不思議だなって」

 ふいに声をかけられて、ケイトはおぼろげに応えた。

「心に余裕が無いと自分すら見失う」

 張り詰めた心だけじゃ何も出来ないぜ、とその男はウインクした。

 そんな男に小さく笑い、去っていく背中を見つめて手の中のガムに視線を移す。

「……」

 戦いに関わる、全ての人間を見ていないといけないのね。解っていたことなのに、それが出来ていると思っていたのに……私は未熟だった。

 心に、何かが染み通る気がして、ケイトは目を閉じた。