ケイトは、地中海の島にあるオープンカフェでくつろいでいた彼を見つけ、すぐに声をかけたのだ。

「ベリル・レジデントでしょ?」

 ベリルと呼ばれた青年は、少し驚いた様子で彼女を見たあと、怪訝な表情を浮かべた。

 彼女は、そんな彼の向かいにある席に綺麗な曲線を描く腰を降ろし、素早く名刺を渡したのである。

 爽やかな風と、カフェから見える青い海が清々しさを装っているが、この2人の間には妙な空気が漂っていた。

 緊張感とでも言うのだろうか、互いに心中を探り合っているようだ。

「何故、私を知っている」

 ケイトは、上品な物言いで問いかける青年を見つめた。