「竜の因子…」

九鬼は、加奈子の全身をまじまじと見つめた。

今は、普通の人間と変わらない。

「九鬼真弓!」

加奈子はギロリと、九鬼を睨み付けた後、

「フッ…お前は、弱すぎる」

鼻で笑った。

「何!?」

九鬼は倒れまいと、何とか踏ん張りながら、加奈子を見つめていた。


「闇夜の刃と言われ…1人戦っていた頃のお前は…確かに、非情で冷酷だった。少なくとも、闇に染まった者には、容赦をしなかった。しかし!」

加奈子は、九鬼を指差し、

「月影という仲間ができてから、お前は変わった!闇に対しては、確かに今も!非情であろう…。しかし!」

「…」

九鬼は何も言えずに、ただ加奈子の言葉を待った。

「今は敵であるおれに、止めをさせない!かつて、仲間だったというだけで!」

「う!」

九鬼は唸った。

そんな九鬼を見て、加奈子は笑い、

「お前は…この世界に、テラを殺した女神と戦いに来たらしいが!今のお前に、女神は倒せん!それどころか!」

加奈子はため息をつき、

「お前は、弱くなっている!」

肩をすくめて見せた。


「言いたいことは、それだけか!」

怒気のこもった九鬼の声に、加奈子ははっとした。

いつのまにか、毒が抜けたのか…背筋を伸ばし、きちんと構えている九鬼が目の前にいた。

全身が、月の光を得て…淡く光っていた。

「なるほど…」

加奈子はスゥと目を細めた。

「弱くなったか!確かめてみろ!」

飛びかかろうとする九鬼に、加奈子は最後の言葉を口にした。

「お前は、安心しているのだろ?」

「何をだ!」

九鬼はジャンプすると、着地と同時に回し蹴りを放とうとした。

「テラが、殺されたことにな!ハハハ!」

加奈子は爆笑した。

「なぜならば!テラと戦わなくていいからだ!」