「うーん」

ティフィンは悩んでいた。

喉が渇いた為に、川辺に近づいたティフィンは、完全に悩んでいた。

「う〜ん」

理由は、簡単だった。

「日本って…どこだ?」

ジャステインと別れてから、浩也のいる日本地区まで向かっていたが…ずっとロストアイランドにいて、そこを出てからは、着の身着のままで旅してきたティフィンが、地理を理解している訳がなかった。

だから、魔界から出ることはできたが…そこから、ユーラシア大陸南部をずっとうろうろしていたのだ。

「世界は…広い…」

肩を落として、水面に映る自分を見つめていると、突然…川が赤に染まった。

「血…?」

すぐに、それが何なのかわかったティフィンは、透明の羽を広げて飛び上がった。

警戒するように、少し上空まで飛んだティフィンは、眼下の川を見下ろし、気を探った。

近くに、強力な魔物はいない。

目を凝らし、血を流しているものの本体を探す。

「うん?」

ティフィンの小さい目に、岩と岩の間に挟まっている人間の男の子の様子が映った。

「!」

慌てて、ティフィンは空から男の子向かって急降下した。

ティフィンがさっきまでいたところから、百メートル程離れた川の中だ。

「!?」

落下の途中、ティフィンは突然羽を広げて、空中で急停止した。

「魔力!?それも、凄まじいくらいの」

微かだが…男の子の方から、魔力を感じられたのだ。

(だけど…)

ティフィンは、男の子から漂う魔力に…生気を感じられなかった。

(この感じは…)

一定の距離を取り、落ち着いて気を探ると、男の子自身の気を別に感じることができた。

(本人の魔力じゃない)

意を決するとティフィンは、男の子が挟まっている岩に着地した。

(神具や…武器から漂う魔力に近い)

ティフィンは、男の子を凝視した。

左手が無意識に、岩を掴んでおり…偶然挟まっただけではないことに気付いた。

(何か…持ってるのか?)

ティフィンは少し…悩んだが、男の子を助けることにした。