「急ぎましょう」

ジャスティンは前を見つめ、

「あいつなら、来ますから」

走り出した。

「ええ」

ティアナも後に続いた。



十字軍本部内の混乱とは逆に、その外部は静まりかえっていた。

式神による情報採取と近隣の部隊の被害状況の確認をメインにしている為に、本部から出ていく者はいなかった。

その対応の仕方も、ティアナとジャスティンには気にいらなかったが、二発目が撃たれないだけましと思い直した。


「お引き取り下さい」

しかし、そんなティアナとジャスティンを待っていたのは…警備兵による冷たい言葉だった。

「な」

絶句するジャスティン。

「只今、部外者を中に入れる余裕はございません」

警備兵の言葉に、ティアナは眉を寄せた。

確かに、ティアナは十字軍には所属していなかった。士官学校もすべての課程を終了していたとはいえ…きちんとした卒業の資格を取らずに、野に出た故に…十字軍の手続きを済ましていなかった。

「だったら!俺は、ここの士官学校の生徒です。証明できます」

学生手帳を取り出したジャスティン。

しかし、警備兵は手帳を見もせずに言い放った。

「先程の爆弾は、辺りに毒を撒き散らします。その毒素は、人に感染する可能性があります」

警備兵はにやりと笑い、

「ですので、今は入れる訳にいきません」

「馬鹿な!あり得ない!」

ティアナは思わず、反論しょうとした。

放射能は病原菌ではない。空気感染したりしない。

その間違いを正そうとしたが、まったく知識のない人間から、一度持った恐怖の印象を拭うことはすぐにはできない。

放射能の検出器でもあればいいが…そんなものを開発する考えも、今のこの世界にはなかった。

「お引き取りを」

警備兵の機械的な対応に、まだ何か言い返そうとしたジャスティンの肩を、ティアナは掴んだ。

「行きましょう」

「先輩!」

まだ引き下がらないジャスティンを強引に、力で移動させた。

「仕方ないわ。出直しましょう」