「はははは!」

なぜだろうか。

人は圧倒的な力を得ると、笑いが止まらなくなる。

男の後ろに立ちながら、ゲイルは軽蔑の眼差しを送っていた。

(このような愚かな動物に…王は手緩過ぎる!魔法を使えなくするなど、まどろっこしいことはせずに、自らの手で自滅させればいいのだ)

ゲイルは、核ミサイルを見上げ、

(この世界の人間で、核の恐ろしさを知る者は少ない。ただ破壊の力のみにとらわれている)

フッと笑った。

「ゲイル殿!今すぐ発射しましょう!」

男の興奮は、狂喜へと変貌していた。

「そうしたいのは、山々ですが…。一応、評議会に許可を貰わなければ…」
「何を仰る!人神がいなくなった今、評議会など何の意味もない!元老院もまた!権威を失った!」

声を荒げる男に、ゲイルは目を細めた。

「は!」

男はゲイルの表情を見て、少し我に返った。 慌てて、頭を下げ、

「ゲイル殿の力が衰えた訳では、ございません。逆に、あなたがいるからこそ、我ら十字軍が権力を掌握することができるのです」

「大佐」

ゲイルは、ゆっくりと首を横に振り、

「私1人の力では、無理ですよ。あなた方がバックにいるからこそです」

男を見つめると、微笑んだ。

「滅相もない!」

男は、両手を振った。

ゲイルは男から視線を外すと、改めて核ミサイルを見上げた。

「ゲイル殿…」

「このミサイルで、世界を我々人間のものした後…元老院を解体し、新たな組織を立ち上げます。表立っては、人前に出ない…秘密の組織を」

「そ、それは…一体」

「まだ詳しくは決まっていませんが…組織に参加する者達の名前は、決めています」

ゲイルは、にやりと笑った。

「そ、その名は?」

「…」

ゲイルはじっと、核ミサイルを凝視した後、おもむろに口を開いた。

「安定者」


「あ、安定者!?」

「ええ」

ゲイルは頷き、

「魔物がいなくなった後、この世界に安定をもたらす機関。人間の平和の為に、永久の安定をもたらす者のことですよ」