「!?」

しゃがみ込み、王宮の跡地の砂を調べていたクラークは、ふと空を見上げた。

真上にあった太陽も、少し移動していた。

「どうかしたの?」

そばで、周囲を警戒していたジャスティンが訊いた。

「何でもない」

クラークは立ち上がった。握り締めた拳の隙間から、砂がこぼれ落ちた。その感覚に気付き、ぎゅっと握り締めた時にはもう…砂は残っていなかった。

いや、ほんの少しだけが、手のひらに残っていた。

(人の成れの果てか…)

クラークはなぜか…その砂が、ついこの前まで人であったような気がしていた。

「クラーク!」

突然、ジャスティンの口調が厳しくなった。

「どうした?」

ジャスティンの方に顔を向けようとしたクラークの動きが、一瞬止まった。

「な!」

戦慄が背中に走った。

「来る!」

ジャスティンは、砂漠と化した王宮の向こうを睨んだ。

「何だ!?この感じは!」

クラークの体が震えた。その為、手のひらにあった砂は、地面に落ちた。

「ま、魔神!それも、上級クラス!」

圧倒的な魔力が、クラークとジャスティンに浴びせられていた。 それは、意識的ではなく…無意識の気の攻撃のようだが、それだけで2人の自由を奪っていた。

いや、2人ではなかった。

「はあ〜」

クラークの前で、息を吐いたジャスティンは…相手の気にのまれることなく、平常心を保つ為に、呼吸を整え、さらに鼓動を正常に戻していった。

その様子を見て、クラークは笑ってしまった。

(大したやつだよ)

その笑いが、クラークの緊張を解いた。

(まったくな!)

クラークは、腰に下げていた短剣を抜いた。

真上の太陽と自らの影を確認すると、

(影切りが使える!ここには、遮るものがない!)

クラークは構えた。

(先手必勝だ)

影を切ることで、その本体をも切ることができる…特殊能力だが、影が重なっていたりしたら切ることはできなかった。

あくまでも、純粋に切る対象の影だけを切らなければならなかったのだ。

(行くぞ)

クラークは、ジャスティンの後ろに隠れながら、一瞬のタイミングを計っていた。