「大袈裟な…」

ライは頭をかくと、玉座から立ち上がり、蛙男を見下ろした。

そして、フンと鼻を鳴らすと、

「過去の魔王など…もし、蘇ったとしても!畏れることはない」

拳を突き出した。

「皆殺しにしてくれるわ!」

その拳圧に押され、蛙男は尻餅をついた。


歴代の魔王から、代が変わるということは…力で捩じ伏せたことを意味した。

基本的に不死であるバンパイアが、死ぬことはない。力が衰えることも、ほぼない。

それなのに、新たな魔王が生まれる意味は……。

簡単である。さらに力あるものが、魔王を倒し、新しい王になったのだ。

そういう意味では、ライの実力は…歴代の魔王の中でも、最強を誇っていた。

魔王が変わる。

そのことは、人間にとっては、最悪を意味した。

尻餅をついたまま、呆気にとられている蛙男に、ライは言った。

「ゲルよ…。この女は、普通の人間ではない。人神と呼ばれ…人間どもに、敬われていた特別な存在だ」

「人…神?」

蛙男は、まだ怯えているアスカに顔を向けた。

「人が、神と崇める存在が、いかほどのものが観察してやろうと…思っただけだ」

ライは、玉座に座り直した。

「そ、そうでしたか〜」

蛙男は、立ち上がると、ほっとまた胸を撫で下ろし、

「わたくしは…もしかしましたら…ライ様が、先代のように、人間にお子様を産ませるおつもりかと…。そうなれば……!!」

そこまで言って、蛙男は慌てて口を塞いだ。

言葉を続けていれば、蛙男は消滅させられていただろう。

続けようとした言葉とは…。

そうなれば、魔王の血がさらに、薄まると…。

「フッ」

しかし、そんな蛙男を見つめながら、ライは笑った。

玉座から自分を見る目の優しさに、蛙男は戦慄を覚えた。

「し、失礼します!」

慌てて頭を下げると、玉座の間から退室した。