天空のエトランゼ〜赤の王編〜

出入り口を潜り、階段を降りながら、浩也はまた首を傾げた。

「そういえば…指輪…いつのまに、つけたんだろ?」

記憶がなかった。



浩也が去った屋上で、一人ため息をついた九鬼は…額を押さえた。

「何をしてるのか…」

自己嫌悪に陥りそうになる。

もう一度、深くため息をついた時……その者は、現れた。

「かの者は…我が姉上のもの」

「え?」

低い女の声が、後ろからした。

慌てて振り返った九鬼は、目を疑った。

「天使?」

屋上の端から端まである白い翼を広げた…天使がいた。

「アルテミア?」

九鬼は一瞬だけ、アルテミアと見間違った。

しかし…明らかにアルテミアではなかった。

ブロンドではなく、茶髪にカールをかけた天使の顔は、明らかに別人だ。

猫のように、丸く大きな瞳が…九鬼を射抜いていた。

息が詰まった。

これこそが、まさにプレッシャーだ。

「装着!」

九鬼は、乙女ケースを突きだした。

「お前は…邪魔だ」

天使は、顎を上げた。


それは、一瞬だった。

もし九鬼の息が詰まらなかったら…つまり、プレッシャーをすぐにはね除けていれば…戦えたかもしれない。

しかし、結果は…乙女ソルジャーに変わることもなかった。

屋上のコンクリートの地面に落ちた…乙女ケース。

鮮血が、水しぶきのように、屋上に噴き上がった。

しかし、それを見た生徒は誰もいなかった。





「浩也!どこ行ってたんだ!勝手に、うろうろするな!」

カレンにこっぴどく怒られている時に、漂ってきた血の臭いに反応し、浩也は後ろを見たが、

「人の話を聞け!」

カレンに頬っぺたをつねられ、探ることはできなかった。

それに、血の臭いは一瞬だった。

カレンに怒られた後、臭いの記憶を辿って…屋上に来たが、血痕一つ残ってはいなかった。

そして、再び…血の臭いがしたのは、放課後になってからだった。