「相原…」

だけど、あたしを呼ぶ声は優しかった。

中島はあたしから目を離さずに、

「今度…時間をくれないか?二人きりで話したい。君には、すべてを話したい。それが、例え…どうすることもできないことでも」

「中島…」

あたしは、頷くことしかできなかった。

どうすることもできないと…彼が口にしたのに、その時のあたしはその言葉に気付かなかった。

「ありがとう」

中島は、いつもの笑顔を見せた後、

「今日はここまででいいよ。多分…彼らも襲っては来ないだろうから」

あたしのそばから、離れていった。



「中島…」

遠ざかる中島の後ろ姿を見送りながら、なぜか永遠に会えないような感覚にとらわれていた。

「あっ…」

あたしは、無意識に…中島に向かって、手を伸ばした。

「理香子!」

後ろから、声がした。

「また化け物がでたって!」

あたしを呼びに来た夏希は、反応のないあたしの前に回った。

肩で息を切らしながら、

「く、九鬼が!苦戦しているの!どうやら、乙女ソルジャーの力が、上手く発動できないようなの!」

夏希の報告に、やっとあたしは我に返った。

「真弓が!?」

夏希は頷き、

「どうやら…もう寿命みたいなの!九鬼が使っている乙女ケースは」

「どこ?」

あたしは駆け出した。もう見えなくなった中島に、背を向けて。

「学校の近く!」

迎えに来た夏希を残して、走り出したあたしの足は、真っ直ぐに戦いの場へと向かっていた。

なぜか…場所はわかっていた。

一目散に、戦いの場へと駆けて行く。

「は、速い!」

後ろを走る夏希は、あっという間に離された距離に、唖然としていた。

「オ、オリンピック…出れるよ〜!多分」