天空のエトランゼ〜赤の王編〜

「さやか!」

高坂の叫びに、如月が頷いた。

「よ、よくも!」

小麦粉をかけられて視界を失った中西が、何とか目を開けれるようになった時、如月は持っていたカメラのフラッシュを顔に向けた。

同じタイミングで、高坂が中西の足下に向けて、回転させたトンファーを投げた。

思わずふらついた中西と、怒りの形相で走ってきたユウリが上手い具合ぶつかった。

「どけ!」

ユウリの体から炎が噴き出し、中西を焼き尽くそうとした瞬間…炎が消えた。

それだけではない。

ユウリ自身の魔力が消えたのだ。

「な!」

絶句するユウリ。

「この能力は!」

足を止めたアイリが、中西を見た。

小麦粉を取れた中西は…トンファーを踏みつけると、横目でアイリを睨んだ。

「ク!」

顔をしかめたアイリが、戦闘体勢に入りかけると、頭に声が響いた。

(二人とも、引きなさい)

その声に、アイリだけでなく、ユウリもはっとした。

(こいつとやり合っても、こっちには何のメリットもないわ)

「畏まりました」

二人は頷いた。

「リンネ様」

そして、その場から、一瞬で消えた。

「あら」

その様子を見て、如月が肩をすくめ、

「作戦失敗ね」

高坂のそばに来た。

「だが…やつが、人間でないとわかった」

高坂は中西を見つめ、フッと笑った。

「で、どうするのよ」

ききながら、如月は拳にメリケンサックを装着していた。

「学園の謎を暴き…悪を成敗する!それが、学園情報倶楽部だからな」

高坂は姿勢を正した。

「そうでしたっけ?」

呆れながらも、緑は空切り丸を構えた。

「…」

そっと逃げようとした輝の襟を、如月が掴んだ。


「ククク…」

その様子を見て、中西は笑い出した。

「虫けらが…舐めるな!」

射抜くような視線が、四人に向けられたが、輝以外は怯まない。

覚悟を決めたからだ。

「行くぞ!」

四人(一人は引きずられて)は前に出た。