「そんな!そんな!」

アマテラスも涙を流し、頭を抱えた。

「どうしてですか!」

アマテラスの体の真ん中に走る巨大な口から、闇が放たれると全身を包んだ。

すると、闇そのものが…実体のない魔物が現れた。

「ライ様!」

魔物は、絶叫した。

「わたくしです!あなたの影!ラルでございます!」

ラルは、闇の体を光に向けた。

「あなた様の忠実なる僕でございます!」

ラルは、涙を流せないが…泣いていた。

「そのわたくしを!なぜ!滅せようとなさいますか!」

ラルの全身が、燃え上がる。

「ライ様!」



「な、何だ?」

上半身を上げた九鬼の体に、光が戻った。

それも、先程よりも強力な光を纏っていた。

戦闘服の一部は剥がれていたが、九鬼の全身に力が戻っていた。

剥き出しの肉体に光が当たり、破裂したはずの内臓が治っていく。

「いける!」

九鬼は、燃え盛っているラルの後ろ姿を睨んだ。

「とおっ!」

気合いとともに、上空に飛び上がった。

空一面が光で包まれ、学園が昼間よりも輝いていた。

月が光で見えないが、九鬼の体は輝きを増していく。

上空から見ると、照らされているのは、九鬼がいる側だけだとわかった。

それに、光が近づいてくるのが理解できた。

なぜならば、光の向こうはまだ夜だからだ。

(太陽が昇った訳ではない)

しかし、光の元は…乙女レンズを通しても見ることはできなかった。

(今は、それどころではない!)

九鬼は、光輝く地表を見た。

足を、豆粒のように小さくなったラルに向けると、落下していく。

「月影キック!」

数秒後、ラルの体を貫き…九鬼はグラウンドに着地した。

「ラル様あ!」

絶叫を上げ、近づいてくる光に手を伸ばしながら…ラルは消滅した。


「やったか…」

着地と同時に、九鬼の戦闘服も砕けて、学生服姿に戻った。