天空のエトランゼ〜赤の王編〜

「おのれえ!虫けらが!」

切られた腕を庇うことなく、九鬼を睨んだアマテラスの目が輝いた。

すると、無数のアマテラスが現れ、九鬼を囲むと、一斉に攻撃を仕掛けて来た。

「!」

九鬼は怯むことなく、四方八方からの攻撃をかわし、凌いでいく。

ムーンエナジーを纏った腕に弾かれると、アマテラスの攻撃が別のアマテラスに流れていく。

いつのまにか…九鬼に攻撃しているのではなく、アマテラス同士で殴り合っている形になった。

「どういうことだ!」

九鬼の動きに流され導かれているのだ。

「クソ!」

アマテラスの1人が攻撃をやめると、それに連動して、すべてのアマテラスが動きを止めた。

「いない!」

いつのまにか、輪の真ん中にいるはずの九鬼がいない。

「!」

アマテラスの1人が、顔を上げた。

「上!?」

月下の夜空に、銀色の戦士が舞っていた。

「何!?」

それに、戦士は1人ではない。

アマテラスの数に合わせて、分身した九鬼が、ムーンエナジーを纏う。

「月影流星キック!」

空から、流星のように蹴りが降り注ぐ。

「ば、馬鹿な!」

光速を超えた九鬼の蹴りを、回避するのは不可能だった。

「虫けらごときに!」


しかし、地上に降り注いだ流星は、地表に辿り着くことはなかった。


「な!」

アマテラスの囲みの外に着地した九鬼は、絶句した。

流星キックは、アマテラスにヒットする前に消滅していたのだ。


「フフフフ…」

アマテラスは、空を上げた格好のまま固まっていたが…やがて、笑い出した。

「ハハハハハハハハハハハハ!」

腹がよじれるかと思う程、大笑いし出すアマテラス達。



「な、なぜ…」

九鬼は着地の体勢から、呆然と立ち尽くしていた。

わなわなと震えだす九鬼の背中に、振り向いたアマテラスが笑いかけた。

「やはり貴様には、その色がお似合いだ」


「クッ」

九鬼は顔をしかめた後、アマテラスの方に体を向けた。

その姿は…乙女シルバーではなく、乙女ブラックに戻っていた。