「当たらないだと!?」

絶句する女に、九鬼は冷ややかな視線を浴びせながら、

「過ぎた力は、人を不幸にするだけだ。ほんの少しの与えられた力にも、感謝できなければ…人は、単に欲望を満たすだけの愚か者になる!」

「単なる人間が!偉そうに!」

女の全身を包むオウパーツが、発動した。

「フッ」

と同時に、九鬼のオウパーツも発動し、オウパーツの振動波を相殺した。

「貴様!」

4つのオウパーツが、完全に一つになった為に、別々の波動を放つことができなくなった女は、振動波の効果がないことに苛立った。

「あたしは、今も感謝している。あの時、もし…足を失わなければ、オウパーツを身につけることはなかった。そして、この場で塵になっていただろう」

九鬼は右足で、女の足を払った。

「すべてに、感謝を」

バランスを崩した女を、そのまま九鬼は投げた。

「我が…地面にひれ伏すなど…あってはならん!」

地面に叩きつけられたが、土を爪で抉りながら、何とか顔を上げた女の目に、月の下で舞う九鬼の姿が映った。

「月影キック」

ムーンエナジーを纏った右足が、上空から飛来する。

「愚か者目が!」

女は右手を突きだして、蹴りを受け止めた。

その次の瞬間、表情が凍り付いた。

「わ、我の体が!?」

「ルナティックキック三式!」

蹴りを受け止められると判断すると、手のひらに当たる寸前、九鬼は爪先を立てて回転し出したのだ。

「オウパーツが、削られている!?」

銃を構えながら、ジェースは驚いていた。

振動波を相殺することは、ジェースにできた。しかし、それでもオウパーツに傷をつけることはできなかった。

それなのに、今…目の前であのオウパーツが削られている。

例え…完全な状態でなくても。

唖然としているジェースの頭に、再びディアンジェロの言葉がよみがえった。

「魂を込めろ!」

サイレンスをただ撃つだけのジェースに、ディアンジェロは言った。

「オウパーツは、サイレンスを撃つ為にあるんじゃない!」