「これが…オウパーツか」

目の前に立っているのに、麗華にはその者の顔が見えない。

「気安く触るな!これは、王の捧げものだぞ!」

精一杯強がって見せた麗華は、オウパーツを発動させた。

しかし――。

「な!」

麗華は絶句した。

オウパーツが発動しても、目の前に立つ者の腕は、塵にならなかった。

「やはり…この程度か…」

落胆の声が聞こえた次の瞬間、オウパーツが割れた。

「我の身を守る価値もない」

真っ二つになったオウパーツを、目の前に立つ者は、闇の中に投げ捨てた。

「ああ…」

頭を包んでいたオウパーツがなくなった瞬間、麗華の瞳は目の前に立つ者の姿を映した。

「王よ…」

一筋の涙が流れた時、麗華の頭の先から爪先までを、衝撃が貫いた。

「下らん」

その場で崩れ落ちた麗華を見ることなく、闇に立つ者は背を向けて歩き出した。

すると、闇の奥に火が灯った。

「ライ様…」

闇の中で控えているのは、リンネだった。

リンネの炎に照らされて、オウパーツを破壊したものの姿が、闇に浮かび上がった。

魔王ライであった。

「いくぞ…」

それだけ言うと、ライはリンネの横を通り過ぎた。

「は」

リンネは頭を下げた後、立ち上がると、そのままライの後ろに続いて歩き出した。

2人の姿が奥に進むとともに、まるで霧が晴れるように、闇が消えていった。

そして、普段の廊下に戻ると、ただ倒れている麗華がいるだけだった。


「く、くそ!どこにいった!」

空間は違うが、ライ達が消えた方向と同じ廊下の奥から、高坂が姿を見せた。

先程、オウパーツにやられたダメージが回復するとすぐに、麗華を探して校舎内を走り回っていたのだ。

「うん?」

そして、廊下に倒れている麗華を発見した。

「大丈夫ですか!」

仮面のオウパーツが取れている為に、高坂は倒れている生徒を麗華とは思わなかった。

慌てて抱き上げると、背中まで伸びた黒髪が、滝のように下に流れ落ちた。