静かな瞳と声で問われる。


「性格は父様。でも顔は、母さん」


答えると父は小さく笑顔を見せた。
けれどその笑顔は無理して作ったもの。


「そう。エイダは母さんの若い頃の容姿をそのまま写したようだ。
だから会いたくなかった。
…俺は少なからずマリーに負い目を感じていた。死を看取れず最後の晴れ舞台にも立ち会えず。
だからマリーの生き写しのようなエイダに会ったら、自分が壊れてしまうような気がした」

「だから、私と目も合わせてくれなかったのですね?」

「ああ」


そう言って父は俯いた。


こんな事って…。


これではただのすれ違いではないか。

お互いがお互いに負い目を感じていて、それ故に小さかった溝が深く暗くなっていく。

そんなこと耐えられない。

エイダは足に力を入れ、立ち上がった。
それに伴って顔を上げる父に、ひとつ言葉を落とす。


「着いてきて下さい」


言い捨て、エイダは後ろを振り向かずに歩き出した。