満月の、風が穏やかに吹く夜に二人は出会った。

理由も分からず異世界に飛ばされたナオトの、その首筋に銀の剣を突きつけるという最悪の状況からスタートした二人だったが、今は仲の良い上司と後輩に落ち着いている。


そして、この二人が、部屋を黒く彩っていた張本人達でもある。


「付き合って欲しい場所って、どこ?」


ナオトが少しからかい気味に言う。


付き合って欲しい場所か。


無意識のうちに落胆している自分にナオトは驚いた。
一体自分は何を求めているのだろう?


ささやかな疑問が頭を駆け巡るが、答えは出ない。


「実は、父親の誕生日に贈るプレゼントを用意したいのだが…」

「プレゼント?」


なんとまぁ。エイダに似合わない単語だな、と思いつつも気付いた時には既に遅い。

勝手に口から本音が零れ落ちていた。


案の定、エイダから
「刺身と煮物どちらが良いだろうか」
という辛辣且つ、恐ろしい言葉が飛んできたが、ナオトはどこ吹く風と言わんばかりに、見事に無視した。