太陽が柔らかな朱に染まる夕刻。

二人の男女の影が、部屋に黒い模様を映し出していた。


「付き合ってほしい」

「……は?」


言いにくそうに肩をすくめ、照れたように笑う女。

対照的に、至極真面目な顔であっけらかんとして答える男。


「いや、だからその。
付き合って欲しい場所がある、のだ」

「ああ。そういう意味」


一歩間違えれば、違う意味に捉えられる台詞を言う女。

おまけに頬をうっすらと染めて言うものだから、勘違いもしたくなる。


一一そう。
珍しく言葉を濁すのは、若くして軍の中佐に登りつめた女、エイダ=ヴァネッサ。

そして、その言葉を未だにぽかんとして聞いているのは、何故だか異世界に来てしまった男、久瀬ナオトである。