マリファナ

 気がつくと私は自分の舌先で必死に自分の歯肉を探っていた、粘膜が敏感になってどうしてもその動きが止められなかった、Rが冷蔵庫から冷えたマーマレードとクラッカーをだして、器用に塗ると私に差し出した。
 私はRの差し出すクラッカーを手に取るのが億劫でテーブル越しに前かがみになり、口の中に入れてもらった。
 強烈な甘みが口腔を満たし、あふれる唾液はたちまちクラッカーに吸われていった。敏感になりすぎた粘膜が、クラッカーをかみくだくことを反射的に拒否した、それでも何とか舌の力で押しつぶすと、まるで光り輝くプレパラートが粉々になってのどをいたずらに傷つけながらくだってゆくようだった。
 意外な一撃にわたしは目をつぶり、顔を上げて耐えた、歯を食いしばると快感の残骸が背骨を伝わり肛門に達した、私がそれを拒否したとき、太ももに重さが加わりなにかが私を包んだ、Rの瞳が目の前にあった。
 Rからは甘い香水と汗と葉巻のにおいがした、柔らかない接触と、マーマレードの味がして、私はついにがまんすることをあきらめた。
 お互いの体が溶け合うような気持ちを感じながら、しばらくの間一つになっていた。