Rは私にわかるように簡単な単語と言い回しで話しながら葉巻をほぐしている、今晩はいい葉巻が手に入ったから、葉巻の葉をジョイントの巻紙代わりに使おうとRが提案したのだ。
 二の腕が汗にぬれ金色の産毛が光っている。
 クーラーが無いせいで、夕方といえど部屋は異常に暑かった、大麻を吸う以上、そうおおっぴらに窓やドアを開けられないし、この時間になると町全体を大きなゴキブリが羽ばたきはじめるので、今は調理レンジのうえの換気扇だけが音を立てて回っている。マリファナが体に回ってしまえばじきに暑さなど感じなくなってしまう、そう思いながらマリファナをアオノリくらいまで細切れににすると、Rに手渡した。
 どこからそのマリファナを手に入れてくるのかは知らないし、聞いたことも無かった。私の中の恥のようなものと警戒心が聞くことをためらわせていた。だが多分買っているのではないだろうとなんとなく思った、マリファナが最初から切られていたことなど無いからだ。
 どこかで自生の物を調達しているか、栽培しているのだろう。
 マリファナを細切れにするのはいつも私の仕事だった。
 Rの部屋は私の部屋のとなりで、私は幼いころからの首の痛みに悩まされていた。
 沖縄に移ってきた当初は、暖かい南国の潮風に吹かれていれば首の痛みも和らいでくれるだろうと思っていたが、希望もむなしく痛みがひくことは無く、ある日、子供のころからの日課である「せんねん灸」を首にすえ、換気のためにドアを開け夕涼みをしてると、「にんにく入りせんねん灸」をマリファナのにおいと勘違いした酔っ払ったRが入ってきて、へい!うちにも上物があるんだけど交換して試してみない?といったのだ。いいとも私はRの部屋に入った。「にんにく入りせんねん灸」の小箱を大事に携えて。