「ただ今戻りました」

「ああ優衣。今日はずいぶんと遅かったじゃないですか」



いつものようにケルベロスはあたしの部屋の黒いソファに腰を掛けていた。



「塾に潜入捜査してたんです。意地が悪いですよ。知ってたくせに……」

「何のことでしょう」

「今回の事件だって冥王星が絡んでるんですよね」



あたしがカバンを机に置いてため息を吐くと、ケルベロスはいつもの妖しい笑みをこぼした。



「私が言いたいのはそういうことではありません」

「え?」



意味深そうな発言に“じゃあどういう意味なんですか?”と聞きながら、黒のネグリジェに着替える。

鏡を見ると人工的な色の髪の毛がいまの格好に不似合いだった。



「わたしはですね…」



すると、ケルベロスはソファから立ち上がりあたしの後ろに立った。



「…見てしまったんですよ」



耳元で低い声で囁かれる。
ゾクッと背中を通り抜けた悪寒と何を考えているのかわからない瞳に全身が金縛りにあった。



「な…なにを?」



震えている声を必死に振り絞ったあたしを見て彼はまた笑みをこぼした。



「なんだと思いますか?」



こいつはあたしをおちょくっているのか。

唇を噛み締めると、血がたれる。



「猫ですよ」

「え?」



鏡にケルベロスの金色のペンダントが光った。

これはあたしが眠りにつくときの……



「待っ…」




「餌付けされて猫本来の野良ねこ精神を無くしてしまった猫をね…」



「どういう意味…」




プツッとそこで意識が途切れた。

倒れこむように悪魔の腕のなかで……

今夜も
あたしは眠りにつく





「ハデス様が知ったら驚愕なさってお怒りになるでしょうね…」





明日が来ると信じて…





~To Be Continue~