探偵学園Q

窓に触れようとしたその時、後ろから雨洞に声をかけられた。自然と眉間に皺が寄ってしまう。
「何か用ですか」と不機嫌な声で尋ねると雨洞は貼り付けた笑みを浮かべた。



「流様に紹介させておきたい人がいまして、下に降りて来ていただけますか?」



仕方なく大きく溜め息をついて雨洞の後を着いて階段を下りる。

背後しか見えないけれど、今の雨洞の顔は醜く歪んでいるだろう。



「数週間前に森の中で倒れていたのを見つけまして、それからはここに住んでいるんです」

「…そうなんですか」

「流様と同じくらいの歳だと思いますよ」

「っ」



思わずドキッと胸が鳴ってまさかと思ってしまう。

でもそんな運命的な偶然なんてありえない。



「黒髪の綺麗な女の子なんですよ」



……ほら。

黒髪と聞いて少しどこかで期待していた気持ちも一気に消える。
やっぱりそんな偶然ありえない、か。



「流様と仲良くしていただけたらと思いまして」

「………」



いまユイはどこにいるのだろうか。

最近気づけばこればかりな気がする。わかっていても頭から離れない。早く会って伝えなければならないことがあるから。


─君達に話しておきたいことがあるんだ。



数日前団先生から伝えられた事実を早く会って君に伝えなきゃいけないことが



「雨洞さんっ。遅くなっちゃってごめんなさい」



………え?

聞き間違えかと思った。
でも間違えるわけがない。

この声は…


こんな所にいるはずがないと思いながらも恐る恐る振り返る。



「買い出し行ってたら迷っちゃ………」



そして、彼女の姿を僕の瞳が捕らえたのと彼女の瞳が一瞬見開かれたのは、同時の出来事だった。




「……ど、して」



団先生の言葉が頭の中で響く。




──あの子の父親は生きている。




~To Be Continue~