探偵学園Q

「ありがとう」





僕たちはまだ幼くて一人じゃ何一つできなくて、今すぐにでもユイを探し出して抱きしめたいのにそれすらもかなわない。

それがくやしくて、でもこの温もりに安堵して、僕は複雑な想いを胸に秘めながら笑みをこぼした。



「あ、リュウが笑ってるとこ初めて見た!」

「笑顔もけっこう可愛いよ♪」



ねえユイ。

君は今どこにいるの?
この繋がった空の下で笑っているかな。君が笑っているならそれだけでいいんだ。



「笑顔も。も!?」

「やきもちやくなよ」

「や、やいてないよ」



でも、もし君が泣いているなら

──僕は……








「…ん」



ここはどこなんだろう。
何であたしは此処にいるんだろう。

体がだるい。
ここであたしは寝ていたのかな。なんで…



──ザッ

「誰かいるのかい?」



辺りを見回していると突然背後から男の人の声が聞こえて、その声の主が姿を表した。



「…だれ」

「私は雨洞。そこの青龍館ホテルでオーナーをしているんだ」

「青…龍館ホテ、ル」


──ズキッ

突然鋭い痛みが頭を襲う。
初めて聞いた単語なのに懐かしい感じがした。



「君はどこから来たんだい?」



ど、こから…?



「…知ら、ない」



あたしがただ呆然と呟くと、雨洞さんは困ったように頭をかきながら優しい笑みをうかべた。




「おいで青龍館ホテルに。記憶が戻るまでそこにいるといい」



そっと差し延べられた手に自分のそれを重ねて立ち上がる。