「おい!ユイはどこだ!どこにいるんだよ!」

「…如何なさいました?流様」



全て知っていたくせにしれっとした様子で僕を見下すケルベロスに怒りと憎さがこみ上げてくる。



「いまユイはどこにいるのか聞いているんだ」



襟元をぐいっと引き寄せながら睨みあげると、ケルベロスの口元が「んふ」という漏れた笑いと一緒に弧を描いた。



「…何がおかしい」

「ふふっ…いえ失礼。ただ、あんなに嫌っていたはずなのに突然どうされたのかと思い…」

「…っ、関係…ない」

「そうですか」



「それは残念です」と厭らしく笑みを浮かび続けるケルベロスの襟元から手を離す。

わかっている。
わかっているんだ。

でも確かめなければならない。



「……もうい「天草家の物置のずっと奥の黒い扉」

「は?」

「優衣の居る部屋ですよ」

「……!」



反射的にその場から駆け出す。

後ろでケルベロスが重大な言葉を呟いていたことに気づかずに。



「…まあもう居ませんけどね。んふ」




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