「……ケルベロス、あたしはあなたを恨むよ」

「…そうですか」

「あたしの記憶がすべて消えても、あんたのことだけは一生恨む」



飛びそうな意識を必死につなぎながら息絶え絶えにふりしぼると、ケルベロスはいつもとは違う笑みを浮かべて跪いた。



「最期に私を考えてくださるなら…それは本望ですよ」

「…ケ…ルベロス」



あたしには貴方がわからないよ。

あたしをしもべにしか思ってないくせに、何でこんなこと。



「なぜ泣くんです?」

「あんたの手のひらで踊らされてる気分でくやしいから」

「…今頃気づいたんですか?」

「何、その笑みは」



以前にも一度だけ見たことのあるその表情にあたしはもう失笑しかできなくて、握りしめていた拳の力を緩めた。



「…もうお別れですね」



…ねえ。
なんで、なんでそんなに悲しげな顔をするの?

玩具がいなくなるから?
それが悲しいからなの?



「ケ…ルベロス…」



でもそれでも、憎くてたまらなかった貴方に、最期まで何も掴めなかった貴方に…言わなきゃ。






「あ…りがと…ね」






今頃気づいたの。

この手段が、あなたなりの優しさだったことに…。


そう微笑んであたしは意識を手放した。

最後に浮かんだのは、リュウでも、Qクラスのみんなでもなくて、ケルベロスの哀しそうな表情だった。








「……優衣」





~To Be Continue~