「ん……」




何度目だろうか。
このシチュエーションは。

あたしが目覚めると、そこはいつもの黒の部屋でケルベロスがほくそ笑みながらあたしを見下ろしている。




「目が覚めましたか?」

「…………」

「任務のほうは無事おわりましたよ?」




そっと寝たままのあたしの手首に手を添える仕草にでさえ、嫌悪感を抱く。

前まではこの人の言うことなら、素直に心の底からきくことができたのに…。




「…結局、任務ってなんだったんですか?」

「……ふっ。気になります?」

「とっても…」




「…そうですか」




ギリ……

「ッ!!!」




途端、ケルベロスの声色が変わったかと思うと手首に激痛が走った。




「…っ!離し…っ」




凄い力で手首を握り締められ、今にも骨がミシミシいいながら砕けそうだった。




「どこからあなたは変わってしまったのでしょうかね?」

「…いっ…た」

「昔はあんなに闇の匂いが似合っていたのに、今ではこんなふうに…」




笑顔で語り掛けてくる、その笑顔があたしの中の恐怖心を一層煽った。

自然と肩が震え、涙が頬を伝う。