「九条?」

俺は思わず呼びかける。

「あ、聞こえちゃったぁ?」

にやついた表情が目に浮かぶような、男の声。

「この子の携帯取り上げて調べたらさ、男の番号あんたしか入ってなかったんで、あんたにかけてんだけどね?」

男は人質を取って優位に立っていると思っているのか、態度が大きい。

「彼氏としては、可愛い奈那子ちゃんが寝取られるなんて耐えられないよねぇ?」

「何言ってんだ。九条は俺の彼女じゃないぞ。今日告白されて断ったばかりだ」

その男の優越感を打ち砕くように、俺ははっきりと言ってやった。

寝取るも何も、俺にこんな電話をかけてきた事が無意味だと教えてやったのだ。

しかし。