俺は眉を潜める。

携帯越しに聞こえてきたのは、如何にも軽そうな若い男の声。

その後ろから、ギャハハハ!と、これまた頭の悪そうな数人の笑い声が聞こえる。

「もしもし?お前ら誰だ?」

「えっとさぁ、遠山君、九条奈那子って女の子知ってる?」

俺の問いかけには答えず、男は話を進めた。

「奈那子ちゃんさぁ、泣きながら道歩いていたからさ。俺達慰めてあげようと声かけたのね?そしたら彼女、ものすごく俺達に抵抗するもんだから、ちょっと頭来てさぁ…彼女の事、預かってんの」

「……」

何だこいつら。

俺は電話を切ろうと耳から離して。

「やめて下さい!遠山君に迷惑かけないで!」

少しくぐもって聞こえる、九条の声を聞き逃さなかった。