私は結局千早人のことを口に出せないままだった。


ちぃちゃん―――


…ごめん。


あたし、やっぱり……


勇樹が好きなんだ。





「時間かかるかもしれないけど、必ず別れる。
だから少し我慢してな」


勇樹の言葉に私は頷く。


そして

「どの位…どの位かかるの?」

恐る恐る尋ねた。


「……それは………わからない」


「そんな!そんなの、前と一緒じゃない?!」


「…ごめん…でも信じて?俺、美凪と離れてわかったんだ。俺には美凪が必要って」


「一緒に住み始めたんだよね?
もうあたしは勇樹んちは行けないんだよね?」


「そういうことに…なるな…」


勇樹はまた肩を落とし、うなだれた。


「会えるようになるの?」

私の声は段々と涙声になって行く。


「なんとか時間作って会いに来るから…」





また不安が襲う……


ずるいよ!


ずるい、今更…



それでも勇樹に会ってしまったら


声を聞いてしまったら…


触れ合ってしまったら……



勇樹への想いは

我慢してた分だけ

私の心を埋めつくしてしまった。