コンコン!

私は助手席の窓硝子を叩いた。


勇樹が気付き、車から降りてくるとこちらに近づいてきて

いきなり私を強く抱きしめた。



「会いたかった…」


耳元で囁く声に、時間が巻き戻されていく。


「あたしだって…ずっと…」



春の夜風は思いの外冷たくて

それでも勇樹の胸は温かくて

私の頬に涙が伝う…。





「とりあえず、中に入ろう」

勇樹に促され、車に乗った。


「もうダメなんだ…俺、アイツとは無理…頑張ってみたけど……限界だよ」


うなだれて、そう呟く勇樹の言葉に

私はハッとした。





そうだった……

一緒に住んでるって…



あたしにもちぃちゃんが……





何も言わず黙っていると、勇樹は私の目をじっと見つめて言った。