「ねぇ…嘘つかなくていいんだよ?」


相変わらず静かで、そして哀しそうな声…



「あたしはちぃちゃんが好き!
もう終わったことはいいの!」


私は千早人にギュゥっと抱き着いた。



千早人は身じろぎもせず話を続けた。



「なぎちゃん……最初会った時、凄く哀しそうだったんだよ。

それから初めてヨット乗った時も……

何か考えごとばかりして…一人で全部抱え込んでいる感じで…

笑っているんだけど、心の底から笑ってないみたいで……」



「だからぁ〜、あの時は別れたばっかりで…」

と言い掛けたのを、千早人は遮った。



「うん、それは聞いたよ?
でも違うんだ…」


「違う?」


「君は…彼……勇樹だっけ?」


千早人の口から勇樹の名前が出たことに

私は驚いて顔を上げた。


そして


「もしかして………?!」




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