ヨットクルーの男達7人に加え
私達3人の総勢10人は
よく飲み、よく笑った。
千早人の言ってた通り
親父達は上機嫌で
早くも顔を真っ赤にしながら
くだらない冗談を飛ばしていた。
そんな中で千早人は一人舵を取り
上半身裸になり煙草をくねらせている。
何気なく視線を感じ、千早人の方を見ると
あの弧を描いた線のような目で微笑んでいた。
その笑顔は
決して美しいとは言えないけれど
優しくて、眩しくて
私の心に温かさをもたらし
十二分に癒しを与えてくれた。
間もなく、ヨットは小さな島に到着した。
ヨットを降り、草の生い茂った島の舗装されていない砂利道を歩いた。
私達3人は、歩調も遅い上におしゃべりに夢中で
先を行く男達をつい見失ってしまいそうだ。
私達が逸(ハグ)れないように
時々振り返っては立ち止まり
合図を送ってくれる千早人の気遣いが
また更に私を優しくさせた。


