いよいよ出航した。
重いエンジン音と波飛沫を飛ばして…
心地よい揺れを感じながら海を眺めた。
デッキでは早くも酒盛りが始まっていた。
「お姉ちゃん達もどうや?」
声をかけられ、ひとみは飛びつく。
大のビール好きなのだ。
「いただきまーす!」
早くも乾杯をしている。
「彩も頂いたら?」
ひとみが声をかけると
彩も缶ビールを貰い、プルトップを開け、飲み始めた。
「そっちのお姉ちゃんは?」
と聞かれ、慌てて手を横に振り
「いえ、あたし飲めないんです」
と恐縮すると
「なんだぁ〜飲めないのか?
1番飲めそうなのに?」
皆が一斉にドッと笑った。
彩もひとみもほらね、というように私を見て笑った。
いつも酒が絡む席で
必ず言われることだったから…
「お茶もありますよ。取って来ますよ!」
笑い声の中、千早人は一言言うと船内に行き
ステンレスのカップに氷を沢山入れたお茶を持って来た。
「ありがとう」
私は受けとり微笑みを返す。
優しい眼差しが注がれて
私はくすぐったい気持ちになった。