合奏の時間。


黄昏時、窓から入る淡い夕暮れの光の中きれいな音色が流れる。


部屋は薄暗くクラッシックの雰囲気とマッチしている。


グラウンドからはかすかに届く、部活生の練習に励む声や音。


4階なので眺めも良く、空が茜色や桃色、薄紫色に染まり美しい。


 贅沢だな…。


端っこの席でこの絶妙な空間に毎日酔いしれることができる。


特にワルツの部分がちょうどいい。



本来、合奏に集中すべきなのだか、フルートはこれといった出番も少なく、目立たないからか、あまり注意されない。


変わりに他の目立つ楽器の修正に時間を割くことが多いのだ。


結果、ボーっとしてしまう。


私にとっては演奏中も待ってる時間もたまらなく良いんだけどね。


演奏中はみんなと一体となり、一つの物語を奏でている感じ。


待っている時は生音が直に聞こえるからついつい聞きほれて空想の世界へといざなわれてしまう。



だから合奏って好きだ。






「じゃあインディアンの所から行くよ。」


インディアン?


「58小節目。ここはタンギング効かせて鋭くね。」


56小節目、インディアンをイメージしてんだ。
知らなかった。


楽器を構え、指揮に集中する。


色々な記号や吹き方もだいぶ覚えてきた。


トゥリルは同じ指を素早く動かしているだけだが、
合奏においていい効果を出してるし、
簡単でカッコイいので好きだ。


その他にも初めて見る記号の意味を知ると「へぇ~」って感じで面白い。


曲は一貫して同じリズムではないし、早さも曲調も変わり、
最初は戸惑うが慣れると楽しい。


逆に何の変化もないよりは、曲に深みが出て面白いのだ。