一方、恵達は本当に確かめに行った。
「こんにちは。」
「こんにちは。」
にっこり笑って返す。
「あの、お名前、登川っていうんですか?」
「え?私?そうよ。登川です。」
「登川先生の奥さんって本当ですか!?」
すると、ああという顔をして、
「本当よ。主人がお世話になってます。」
と言ってまたにっこり笑った。
「えー!?なんであの先生と結婚したんですか?」
「どこが良かったんですか!?」
ひどい言われようである。
そして、間接的に奥さんにも失礼だ。
顧問は不細工というわけではないが、カッコイいとも…。
普通のおじさんだ。
ただ他の先生より若干若いので独身ぽかったのと、奥さんが美人すぎたのだ。
つまり、この人ならもっとカッコイい人と結婚できそうなものを…という極めて失礼な考えである。
~♪
「ここはクラリネット、スタッカートでするどく切って行こう。」
「…え?でも登川先生が、あまり切らない方がいいと言ってました。」
今日の指揮は久高先生である。
「え?そうなの?」
「はい。」
「う~ん…。
そうか、意見は合わせないと困るよね。
じゃあ、さっき言ったことは忘れて。
6小節目から。」
「はい。」
前にも言ったように、同じ曲でも指揮者によって雰囲気が変わるので、たまにこういうことはあった。
そのたびに先生2人は話し合ってどちら採用するか決めてたようだ。
「さっきの所、私は久高先生の方がいいな。カッコイいし。」
「でも、合わせるの難しいよ。確かにカッコイいけど、後輩達とかバラバラになりそう。」
「そっか…でも練習すればなんとかなるんじゃない?」
「そもそもさ、二人のねらいはなんなんだろうね?」
「え~やっぱり、久高先生は曲を良くしたい。で、登川先生はみんながやりやすい方を。って感じじゃない?」
「なるほど、一応顧問だしね。登川先生の方が私たちのレベルも知ってるだろうし。」
「久高先生の案が採用されたりもするし、登川先生も結構、久高先生のこと信頼してるよね。」
「あぁ、確かに。」



