吹いて奏でて楽しみましょう


そんな久高先生だが、彼の指揮はとにかく動作が大きく、細いながら全力でやってます。と言った感じだった。

推定40半ばだろうと思える顧問とは、勢いが違う。
スタイルが違うとも言えるだろうか。


「久高先生の指揮って動きが激しいよね。」

ある時、部員の一人が久高先生に言った。

最初のうちこそ、お互いよそよそしかったが、すぐに打ち解け、気さくに言葉を交わす。

「そうかな?」

本人は自覚がなかったよう。

「うん。そうだよ。」

比較的前の列、しかも真ん中にいる子達は、もろに影響を受けるのだろう。
みんな同意する。


「だけど、オーケストラの指揮はもっとすごいよ。今でも抑えてる方。」

「えー!?本当?これより?」

「どんな感じ?」

「う~ん、どんなと言われても…。まぁ、前に飛び出しそうな感じ。」

「なんかすごそう。」

「ちょっとやってみせて!」


生徒のリクエストに苦笑しながらも、譜面台をどけて、構える。

「ちょっと曲吹いてみて。」

~♪

音が流れると同時に先生のオーケストラ用(?)の指揮が舞う。

 本当だったんだ。
 タクトがしなるというより、先生の体がしなってます。

霊的な何かが乗り移ったような動きだ。


渾身のオーバーアクションで、前に飛び出さんばかりに(いや飛び出している?)体中で指揮をする先生をあっけに取られて見る。

「うわっ」

前列はびっくりしてのけぞっている。

確かにあれでも抑えてた方なんだ。とわかる迫力だ。

「…な?違うだろ。」

数小節で止めて、久高先生の動きがとまる。

「えー!?本当にあんなにやる人いるの~?」

「ちょっとコワいけど。」

そんな感想が出るほどに大げさな指揮。

 私も初めて生で見た。


「もちろんだよ。これぐらいハードじゃないと、ついてこないんだから。」