のもつかの間。
「腹筋て、何で鍛えるかわかる?」
え?
「息を長く出すため?」
「じゃあ、息はお腹から出るの?」
シーン。みんな押し黙る。
先生が私を見た。
「肺…です。」
「え?肺?じゃあ、複式呼吸って何?」
え?違うのか?腹なのか?
「お腹?」
「え?本当?お腹に息がたまるの?」
わざと?
私達が混乱していると、ちょっと呆れたように先生は説明した。
「息は肺にしか入りません。その肺を広げたりするために腹筋で横隔膜を上げたり、下げたりするのよ。」
「横隔膜?」
「肺の下にあるもの。」
「ああ。」
何となく納得する私達。
「次は…、音合わす訓練ね。」
げっ!!来た!私、これ苦手なんだよ。
チューナーではだいたい一発OKだが、それは長年の慣れで。
音の微妙な高低はさっぱりわからない。
やり方は、私と後輩の誰かが、B♭を吹いて、他の子が私より高いか低いかを当てるというもの。
私は、常に一定でなければならない。
「今のは?低いと思う人。」
誰かが手をあげる。
「高いと思う人。」
残りの誰か。
わからない人は手を挙げないが、どっちでもいいからとみんな手をあげた。
もちろん私も。
そこで、才能を見せたのが、比奈ちゃんだった。
「あなた、音感がいいわね~。」
確かに比奈ちゃんは、ほとんどミスをしなかった。
へ~こんな才能もあったんだ。
私にはない意外な才能に思わず羨ましくなるが、頼もしくもあった。
子離れする母親ってこんな感じ?
そして、寂しくもある。



