吹いて奏でて楽しみましょう


初めにどういう基礎練をやっているのか見たいと言う。

 曲の指導じゃないんだ?

不思議に思いながらも、いつも通りやると、キリの良いところで止めて、次に移るように言われる。

後は、渡嘉敷先生が聞くことに説明をしたり。

「なるほどね、基礎練の仕方はだいたいわかったわ。
で、楓さん?この基礎練の意味はわかる?」

基礎練の意味。
それは、曲をより上手く吹くため。

そう答えると、

「うん、もちろんそうね。あとは、楽器を慣らすとか、口を調整するとか、いろいろあるんだけど。
じゃあ、さっきのロングトーン、一音下から上がるのはなぜ?」

「それは…」

はっきりした理由は聞いてないか、聞いてたとしたら、忘れた。

 でも、なんか分かる気もするんだけど…。

「わからない。そうよね?」

「はい…。」

「やっぱり、あのね基礎練の意味を知らないと効果が半減するの。
だったら、普通の一音ずつのロングトーンをもっと長くした方がいいわ。」

 そうなんだ。意味がわからなくても、やってれば効果は出るものだと思ってた。
半分はでるらしいが。

「私は、あなたが習った先輩がどういう意図でこの練習法にしたのか、わからないから、確かなことは言えないけど、
おそらく、一音下から伸ばすことで、スラーや、音の正確さを鍛えようということじゃないかと思うの。」

「はい。」

「でも、聞いてたら全然出来てないわ。はっきり言って、何の効果もない基礎練はやらない方がいい。」

 そうなんだ…。

ズバッと言い切られ、少しショックを受ける。


「どうですか?」

少し休憩を入れ、落ちついた所に顧問が来た。

「う~ん、今基礎練見てたんだけど…意味を把握しないでやってたようね。」

顧問と渡嘉敷先生の会話が小さく聞こえて、やがて聞こえなくなった。

二人が少し離れたのだ。気になるが、悪いようにはしないだろう。

彼女は教えにきているのだから。

 あまり厳しそうには見えなかったけど、怒られたりしたらイヤだな~。
後輩の前だし?

後輩を見ると緊張しているのか、いつもより笑顔がない。

「プロの人に見てもらえるなんて、すごいよね~!」

焦ってなんとか明るく話題をふる。