頭でわかってても、すぐにはできないのが、普通だ。
「あ、そっか。二人は楽譜を見て、すぐにその音が何か、長さはどれぐらいかって判断つく?
たとえば…これは何の音?」
高いミの音を指す。
「…ミ?」
答えたのは藍理ちゃん。だがやや遅いか?
「正解。じゃあ、洋子ちゃんこれは?」
「う~ん、ドレミ…シ?」
遅い。
「正解。藍理ちゃんはピアノとか習ってた?」
「はい、昔。」
「洋子ちゃんは?」
「ないです。」
やっぱり。洋子ちゃんは私タイプだな。
「そっか、今は楽譜読むの遅いけどそのうち慣れて早くなるよ。私もピアノは習ってなかったからね。
じゃあ、最初は音符の上にドレミを書こうか。」
音楽の授業でも楽譜が苦手な人がよくやる手法だ。
吹奏楽に入りたての子でもよくやる。
「…書かないとダメですか?」
洋子ちゃんが私の意表をつくことを言った。
「へ?いや、ダメってことないけど…その方がやりやすいでしょ?」
「…できれば書かないでやりたいです。」
「そう…。」
意外な言葉に考え込む。
いやいや、なんで?だって、そのままじゃ難しいよ?
…もしかして、
「早く楽譜に慣れたいんです。…なんか、譜面にドレミを書くのがカッコ悪いというか…」
プライド?
「いや、最初はけっこうみんな書くもんだよ?別に珍しくないし。」
「そうなんですか?」
意外そうに聞いてくる。
「うん、そう。」
私が頷くと、洋子ちゃんはう~ん、とまた考えこんだ。
藍理ちゃんとの差にコンプレックスを抱いたのかな?
ふと、一年の頃に琴子と練習していた時を思い出す。
洋子ちゃんて負けん気が強いんだろうな。
そんな気がする。
「やっぱり、書かないでやります!」
「…そう。」
洋子ちゃんの決断に感服されつつ、不安もつのる。
「じゃあ、今からAの部分だけ吹くから、それを参考に練習しといてね。」
「はい。」



