パー♪ タラリラリラ~♪ ブ~♪

 うっ!改めて入るとうるさいな。この教室。

最近では全員が第1音楽室で練習しているので、音が一斉に流れてくる。

もちろん、フルートの音はかき消されることが多いわけで。

 大丈夫か?ここで練習して。

「あ、楓!新しい子紹介して!」

茜達が興味津々に聞くので、とりあえず中に入った。

「え~と、幸地貴子ちゃん。だよね?」

「はい。よろしくお願いします。」

私が早くも名前をわすれかけていると、貴子ちゃんはみんなにペコッとお辞儀した。

「楓、しっかり~。」

「あはは。人の名前覚えるの苦手。」

「貴子ちゃん、真面目そう。」

そう言われた貴子ちゃんは謙遜して首をふる。

茜達を紹介し、ちょっと離れた席で練習に移った。

「じゃあ、初めはこれから。」

フルートの頭部管を渡したら、後は昔、先輩に教えてもらったことを思い出してレクチャーする。

~♪~♪

「そうそう、いい感じ。」

 それにしても…、
初心者ゆえ、音が小さい。なのに、

 やっぱここ、うるさいな~。聞こえづらいよ~。

ふ~む。
どうしようかと考えていると、貴子ちゃんが質問してきた。

「…」

「え?何?ごめん聞こえなかった。」

「?」

お互いの会話もままならない。

 いかん、これは。

「茜!茜!ちょっと。」

「何?私?」

「第2音楽室使っていいかな?」

「なんで?」

「ここうるさくて、貴子ちゃんの練習みにくい。」

「あ~そっか。いいんじゃない?」

「そ。ありがとう。じゃあ隣の教室移るわ。」

「うん、頑張って~。」


というわけで、誰もいない第2に来たのだが。

 これでいいのかなあ?

早くも、新たな懸念が浮かんだ。

 だって、みんな第1で練習してるのに、いきなり先輩と2人きりって後輩としてはイヤじゃない!?

それに、なんか気まづい…。