サックスの先輩が自分の練習場所に帰ると、私達はフルートを持って別の教室に行った。


第1音楽室と第2音楽室に挟まれた小さい部屋。

音楽準備室。

「ここにしか鏡がないのよ~。」


等身大の大きな鏡がある。


「ちょっともう一回吹いてみて。」


ふ~、ふ~


うーんリコーダーとかと違って吹きにくい。


他の楽器に比べれば音がでるだけマシなのだが。


そう思っていると


「タンギングが弱いかな‥

楓ちゃん、タンギングって知ってる?

リコーダー吹く時に習ったと思うんだけど。」


タンギング。あーそういえば、舌を使って息を操作するやつだったかな?


いまいち曖昧な知識。


「“トゥー”って発音するとわかりやすいんだけど、

上の歯ぐきに舌をつけて、息を吐く時に離すの。」


両手で舌の動きをジェスチャーしながら説明してくれる。


“トゥー”と発音してみると。
なるほど、なんか思い出してきた。


声は出さずに“トゥー”の形で息だけ吐く。


フー♪


「あ、なんか音が出しやすくなりました!」


「うん、さっきよりしっかり出てるね。」


私達は笑顔になる。


「タンギングは他の楽器でも大切だけど、フルートは特に大事なの。


タンギングの強弱で音の大きさや切れも変わるのよ。」


「へ~、そうなんですか。」


「次は、アンブッシャーね。口の形のことで、

“M”って発音した時の最後の形がフルートを吹く形になる。

ってよく言われてるんだけど意味わかる?」