転校生と言えば、緊張して初めは物静かなイメージがある。
彼なんか色白な上に元吹奏楽部(体育会系じゃない)、しかも遠い南国に来たとあればなかなか慣れるのも難しいだろうな、と思った。
確かに最初は大人しかったのだが、
「ちょっと、お姉さんお姉さん。」
呼ばれたとも知らず練習を続ける私。
「呼んでるのに、無視しないでよ。」
「は!?私?」
お姉さん!?同じ年なのに?ちゅーか、なんつー呼び方なのすんのよ?
「ぶっ、なんか田中君てウケるよね~。」
茜が田中君の物言いに笑い出す。
彼は、外見のせいか、どこか冷めてるようで子どもっぽくなく、それでいて飄々(ひょうひょう)とし、誰にでも物怖じせず対等に話しかけた。
そのせいか、あっという間にみんなの輪に入り、どこか独特の雰囲気を出しつつも、それも面白いと受け入れられていた。
う~ん、結構転校してるのかな?
うまいよな、距離の取り方。
密かに感心する私。
先生からの信頼も得、副部長にまでなった。
因みにもう一人の副部長はトランペットの美里だ。



