吹いて奏でて楽しみましょう


その日の放課後。

「ここだ。」

顧問が来たが、誰かと話しているらしい。

「よお。喜べ、新入部員連れてきたぞ。」

「え!?こんな時期に?」

 誰?

「こんにちは。」

遠慮がちに入ってきたのは、見たことのない男の子。

 誰?何年生?

「今日転校してきたばかりでみんな知らないと思うが、仲良くしてやってくれ。」

「え!?転校生!?」

たまたまその場にいた子で、1組の子がいなかったので、みな驚く。

 どおりで知らないわけだ。でもなんで?しかも男の子だよ? 色白いけど。

「田中秀一って言います。よろしく。」

田中君の自己紹介にみんな軽く会釈したり、よろしく、と返したりする。

「田中君はな、前いた学校でパーカッションをやっていて、その学校が、結構強かったらしい。
いい戦力になるぞ!」

 あ~それで。それにしても先生根回し早っ。


田中君は、沖縄県民の私達から見れば典型的な本土の顔で、よく見慣れた男子と比べると、全然違う。

まず、有り得ないぐらいの色白。
真っ直ぐでさらさらな黒髪。
一重の切れ長な目。
身長も少し高い方か。

 これでパーカス…。
木管楽器でも吹いてそうだ。

と、去年のやんちゃな3年男子達を見てきた私は思ってしまう。


何はともあれ、吹奏楽の形態を成してない我が部へようこそ…。