「いや、私もはっきりこうとは言えないけど…だって、うちら2年になって人前で演奏してないじゃん。」
「あー、うん。」
「吹奏楽祭にもコンクールにも出てないし。今やってることが将来どう生かされるのかはっきりわかんないよ。」
「…でも、先生は演奏会みたいのに出るって…」
「それも、あやふやじゃん。意味わからないし。」
「う~ん、そうか~。」
私は反論できない。確かに、夏休み明けても確かな計画はなにもない。
「なんも見えないのに、やる気出ないと思うんだよね。」
「先生、そのことでなんか言ってた?」
「うん、まあ、原因はわかってたみたい。だから、練習してないの気づいてもしばらく放っておいたんじゃないのかな?
あれから少し厳しくはなったけど、怒られてはいないし。」
「あ~廃部にもならなかったしね。
私、それが一番怖かった。」
「そうなの?楓はどうでも良さそうな感じだったけど…」
うっ、直球だな。
「まあ、確かに1年の時は練習きつくて辞めたいって思うこともいっぱいあったけど、
それも乗り越えて、せっかく後輩できてさ、これから楽しいこともあるはず!って思ってたから。
それに、楽器や部活が生活の一部になってるから、なくなったら寂しいよ。」
「そうだよね!私も後輩も楽器も仲間も手放したくない!せっかく先輩の立場に立てるし。」
「先輩と言えば…聡美先輩にも言いづらいしね。」
「あ、手紙のやりとりしてるんだ。」
「うん。
廃部になりました。とか恐ろしくて書けない…。」
「あははっ。確かに無理だ、それ。」
夕暮れ、帰り道に通る小学校の運動場は、もうポツポツとしか人がいない。
そんなグランドを眺めながら、茜とはいろんな本音が言い合える数少ない友達だと思った。



