自転車置き場に着くと。

レイジは自分の自転車を引っ張り出して来る。

レイジは自転車通学。

僕は徒歩通学だ。


レイジは器用に、スポーツバックを自転車のカゴの中に収めると。

「ほら、乗れよ!」

僕に向かって言う。

僕は後ろの席に座って、サドルの下の部分を掴む。

本当は、レイジの身体に腕を回してみたい。


「行くぞ~!」

レイジは立ちこぎで勢いをつけてから、校門から外に飛び出す。

僕はそんなレイジの背中を見つめている。

レイジが立ちこぎをやめれば。

いつもそっとその背中に。

自分の耳を。

頬を。

近づけてみる。


レイジ、分かっているんだ。

叶わない想いだってことくらい。

でもせめて、この瞬間だけは・・・。


夕暮れ色の空の下。

二人乗りの自転車が、土手沿いの道を、風を裂いて走って行く。