ギギッー。

椅子が床にこすれる音。

静まり返った教室では、余計にその音が響き渡る。


みんなが。

僕が見たその先にあったのは。

レイジが立ち上がっていた姿だった。


みんなの視線が集まる中。

かすれた声で、レイジが発した言葉は。

「・・・相手は、誰なんだよ。」

とても切ない、響きだった。

「そんなのあんたに、関係ないでしょ!」

ユリが怒りに任せて、言い放つ。

「関係ないことあるかっ!俺は・・・、俺はお前のことが好きなんだぞ!」

「・・・好き?一度告ったくらいで、いい気になんないでよ!あたしが本気であんたのことなんか、好きになるとでも思ってたわけ?ふざけないでよ!男なんて、みんな大っ嫌いよ!」

ユリの憎しみの眼差しが、レイジを貫く。


悲しいことだけど。

僕には。

ユリのそんな眼差しも。

言葉も。

気持ちも。

なんとなくだけど、少し分かるような気がした。


きっと。

きっとそれは。

好きな人に、決して振り向いてもらうことが出来ない。

とても悲しい、・・・心の叫び。


「なんだよ、それ・・・。」

レイジはそう言ったまま、うなだれた。

「ナナ行こう。こんなとこ、もういたくない。」

ユリは泣いているナナの手を、半ば強引に引っ張り上げて、立ち上がらせると。

そのまま二人して、教室を出て行ってしまった。