「観覧車、なかなかいいぜぇ~!」

聞きなれた、レイジの能天気な声が近づいて来る。

ユリは急いで涙を拭う。

でもレイジはそれを、見てしまったようで。

「おい!なに泣いてんだよ?・・・まさか、シュン?」

レイジの怒った顔が、僕をにらみつける。


レイジはユリのことが好きなんだから。

そう思うのも、仕方がないか。

分かってはいても、僕の心はズキンと音を立てる。


「・・・ユリ?」

ナナが心配そうな顔で、ユリの隣りに腰をかけた。

そのときユリが突然、ケラケラと笑い出した。

「ちょっと、二人とも簡単にだまされすぎ。シュンくんとグルになって、二人をだまそうって話してたの。あたしが泣いたフリをするからって。」

「なんだよぉ~。それはっ!」

レイジがホッとした声を出す。

「本当?ユリ?」

ナナがユリの背中をさすりながら言う。

「本当よ!あたしが泣くわけないじゃん?」

そう言ってユリは、僕のほうをチラッと見ると。

再び、ケラケラと元気そうに笑った。


それから僕達は。

なにもなかったかのように。

閉演近くまで。

遊園地を満喫して。

遊園地を出た後。

それぞれのメルアドを交換してから、帰路についた。