生憎、金はもう底を尽き宿屋には入れない。




「野宿・・・するしかないな。」





ポツリとそんな言葉を呟く。





「あれ?山内さん・・・?」





後ろから声を掛けられビクッと肩が揺れる。





そっと振り返るとそこには池田屋の時にお世話になった医者が立っていた。






「・・・・松本医師?」





「あぁっ!!やっぱり山内さんですね?どうしたんです?こんな所で・・・」








「いえ・・・失礼します。」






そう言って足早にその場を立ち去ろうとする凛の腕を松本はガシッと掴んだ。






「山内さん、診療所に来なさい。酷く顔色が悪い。」






松本はそう言うと有無を言わせず凛を引っ張っていった。