紅い月

「凛くん?私の顔に何か付いているかね?」



近藤の声でハッと我に返る。



「いえ・・・ただ局長が父に似ていたもので・・・」



凛がそう言うと近藤は優しい笑みを浮かべた。




「そうかい?そりゃあ嬉しいなぁ。私は凛くんが自分の娘の様にかわいいよ。私じゃあ凛くんの父上のように立派ではないが私の事を父と思って何でもぶつけておくれ。私がそれを全て受け止めてやる。だから遠慮はするな。」




近藤はそう言って凛の頭を優しく撫でた。



どうしてこの人は私の欲しい言葉をくれるのだろう・・・。



家族がみんな死んで、私を引き取った叔母には酷い仕打ちをされ、殺されかけ・・・誰一人として私を必要としてくれなくて、いっぱい泣いた。だけど泣いても誰も助けてくれない。感情なんて邪魔なだけだ。あっても無駄。その日から私は感情をなくした。




だけど本当はなくしてなどいなかったんだ・・・。必死で泣かないように自分の感情を押し殺していた。そうでもしなくちゃ自分が壊れてしまいそうで・・・



だけどこの新撰組のみんなは私の事を大切にしてくれて、私に居場所をくれた。



やっと心から信じられる仲間ができた。



「近藤さん、」



私の呼びかけにそこにいたみんながこちらを見た。




酷く驚いた顔で・・・



それもそうだろう。



今までは距離を置くために局長としか呼んでいなかったのだから・・・。